腕は内側に曲がる(팔은 안으로 굽는다)

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諺で知る韓国の熱い心
第二回腕は内側に曲がる
第二章 腕は内側に曲がる(팔은 안으로 굽는다) ― 韓国の学縁、地縁
『腕は内側に曲がる(팔은 안으로 굽는다、パルン・アヌロ・グンヌンダ)』という俗諺があります。「自分に有利なことを考える行為、または、自分に近い人に興味を寄せたり、情を込めたりするのは当然なことである」という意味を持っている俗諺です。友人や家族、親族の間で不幸なことがあった場合、お互いを助ける行動のようにポジティブな場合にも使う俗諺ですが、主に、大手企業の社長の息子が親の会社に働くことになった時、米政府がスマートフォン市場に関してサムスンよりアップルに有利な見方をする時、検察が高位公務員の犯罪に対しては軽い処罰をする時など、「近い方の面倒を見てあげる」という意味のネガティブな場合によく使われる表現です。状況によっては批判の意味を込めている場合もあります。同じ意味を持つ似ている表現としては「ザリガニはカニに味方する(가재는 게 편、ガゼヌン・ゲ・ピョン)」という俗諺があり、「模様や事情、状況が合うもの同士交わる/お互い庇い立てすること」を比喩した言葉です。
それでは、韓国で「腕は内側に曲がる」ということわざが一番頻繁に使われる時はいつでしょうか。それは、韓国の「学縁(학연、ハギョン)」(同じ出身学校であること)、「地縁(지연、チヨン)」(同じ地域出身であること)を論ずる時です。出身高校、大学などによる縁はどこにでもありますし、同じ地域からの人に対して親密感を持ちます。そういった感情が悪いとは言えませんが、偏った縁が社会的に強く作用していると「問題や病弊」が生じます。韓国で縁の文化は社会的に多く機能してきており、昔から話題になってきました。「縁」という言葉自体は非常に良い意味を持っていますが、これがネガティブに作用すると就職や昇進などに不公平さをもたらす可能性もあります。最近、韓国では企業の採用において、学力よりも個人の能力を重視することを公表した企業が増え、マスコミから「学縁/地縁」を乗り切ろうという主張も出てきます。しかし、社会全体にしっかりと根付いているこの「縁の文化」はなかなか解決しにくいものと思われます。
日本でも受験生が憧れるトップ大学は決まっており、ランキングもきちんと付けられていますが、韓国でもこのような事情は変わらず、日本よりも厳しいように感じます。日本では全国に優秀な国立大学がありますが、韓国ではソウル大学のほか有名大学のほとんどがソウルに集中しており、「良い大学」の範囲がさらに狭くなります。毎年、受験生が大学の頭文字だけ羅列してすらすらと覚えている大学ランキングですが、その中でも最高と言われる「トップスリー」は、昔から変わらない地位にある「ソウル(서울)、 高麗(고려、コリョ)、延世(연세、ヨンセ)」大学です(いくつかの特別な理系大学、機関は除きます)。 そしてこの三つの大学のイニシャルをとって韓国ではSKY(スカイ)と呼びます。財界、政界など韓国の中核はこのSKYの出身者が多く、社会的に認められている職場でもこのスカイ出身者が多いです。「腕は内側にまがる」ということで「SKY」を出た先輩と後輩間の繋がりが強く、お互い面倒を見てあげようとする傾向があります。このような心理が採用や昇進に作用し、韓国の良い職場ではSKY出身者が常に多い状態です。マスコミによると、2012年の調査によると、新規任用されたロースクールの卒業生の内、85%以上がSKY出身であり、法務部が個々人の能力より出身学校による縁続きや人脈を考慮したのではないかという疑惑が提起されました。韓国のこのような現象のため、数万名の受験生が毎年SKYの垣根になんとか入るために頑張っており、この「SKY」への執着が毎年多くの浪人生をも生み出しています。
韓国の「地縁」にも「腕は内側に曲がる」という俗諺が同時に思い浮かびます。「地縁」とは「自分と同じ地域出身の政治家に投票したり、同じ故郷の人と親しくする」というような行為に合う言葉です。韓国では大きく分けて全羅道(전라도、チョルラド)と慶尚道(경상도、キョンサンド)間において、昔から地縁が強く作用し、対立感情が深まってきました。主に政治的な利害が対峙し、チョルラドは比較的に左寄り、キョンサンドは右寄りの性向を持って派閥争いを展開してきました。そして、この二つの地域の人々は一般人であってもお互い好まないという話もあります。韓国では出身地を基準に人が集まる光景もよく見受けられます。出身地域によって人に親近感をもったり、自分の地域に利益をもたらしてくれそうな同じ地域出身の政治家に投票したりするなど、当たり前のことと思われるかもしれませんが、韓国の未来のために克服しないといけない重要な案件として毎年マスコミで取り上げられています。
この「学縁、地縁」が職場まで広がり、よく出てくる言葉が「落下傘(낙하산、ナカサン」です。「落下傘」は日本語で言う「天下り人事」と似ている表現ですが、退職した高官が関連ある民間会社に転職することを意味している日本語の表現とは違い、韓国語の「落下傘」は「採用や昇進などの人事に対して、陰で知り合いの手を借りる」という意味で使われます。誰かのおかげで会社に入ってきた人に対しては「あの人、落下傘らしいね。」といったように陰口を叩いたり、急に昇進した部長には「落下傘に乗ったね。」というように表現したりします。政治に関しては「落下傘公薦」などの表現も使います。誰でも何ら関係のない人よりは自分に近い人に興味を持ったり親しく感じたりするのは自然です。しかし、より成熟な社会を目指すためには「学縁、地縁」、「落下傘」などは否定的なものと捉えるべきです。人々が意識転換に取り組んで「腕がいつも内側に曲がる訳はない」という俗諺が通用する社会になってほしいという意見が聞こえるのが、現在の韓国社会です。
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