血は水より濃い

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諺で知る韓国の熱い心
第三回 血は水より濃い
第三章 血は水より濃い(피는 물보다 진하다) ― 韓国の家族主義

血は水より濃い(피는 물보다 진하다、ピヌン・ムルボダ・ジンハダ)という俗諺があります。血は親族を意味し、水は血縁的に関係がない他人のことを指します。「血肉の情が深い」という意味を持っている諺で、他人より親族や家族など血を分けた人を優先すること、家族を重視する韓国文化を表している言葉です。韓国文化の中でも一番頻繁に挙げられる概念が「情(정、ジョン)」のことですが、その中でも家族や親族同士の情、それに対する絆などを表現した代表的な俗諺です。
他に、親子の愛情に関する似ている言葉として「ハリネズミも自分の子はつやつやしていると言う(고슴도치도 제 새끼는 함함하다고 한다、ゴスムドチド・ゼ・セキヌン・ハムハムハダゴ・ハンダ)」という俗諺もあります。針のような毛も自分の子のものだったら柔らかく見える。親としては自分の子に関することは何でも可愛く見えるという意味を持っています。「血は水より濃い」と共に家族間の愛情、大切さを表現している諺です。
世界が産業化し大家族の文化が核家族へ、三・四世代が一緒に住んでいた家族形態が一・二世代へ変化し、結婚せずに独身の生活を選ぶ人も増えてきましたが、韓国ではまだ社会の基本単位は「家族」であり、結婚しないことよりも結婚して家庭を築いていくことを重視します。同時に、親子間で互いに世話をする文化が最も強い国の中で一つだと考えられます。伝統的な儒教文化の影響を受けた韓国では、子供たちが成人し独立するまでは親は自分たちを犠牲にしてまでも出来るだけ最高のことをしてあげようとします。逆に、子供たちが成長して独立し、親が年を取って老いると、子供たちは親の面倒を見てあげるのが社会的な通念となっています。韓国の社会といえば、このように家族中心で流れているものです。
欧米社会では(比較的)国で保障されている保育や老人介護などが、韓国ではまだ家族間で世話をすることで補われている場合があります。例えば保育に関しては、共働きの場合は保育園・幼稚園に子供を預ける親もいますが、信頼できない他人に自分の子を任せることよりも自分の姑(시어머니、シオモニ)、 母(친정엄마、チンジョンオンマ;嫁に行った女の母)に育児を頼む家庭が多いです。両親が年をとって老人になっても老人ホームには行かせずに娘や息子と一緒に暮らす家族の割合も多いです。こういった場合の多くは、長男が親を養う責任を持ちます。昔は男性中心の考えによって、家族全員が夫の実家に暮らしたり、夫の両親と一緒に暮らすのが当然なことでしたが、最近は、韓国も社会がどんどん変わって行き、 親から独立して夫婦だけで生活するカップルが多いのは勿論、嫁いだ女性の母や両親と暮らしたりする家庭も少しずつ増えてきました。
このように家族間でお互いに世話をする風習は、確かに韓国の家族文化の特徴であり、良いものとして考えられています。しかし、否定的な面もあります。それは、成人しても親から独立しない子供、または、成人になっても子供を独立させない親が多くなったことにあります。韓国では「主体的に行動せずに母に依存する人」を指す「ママボーイ(마마보이)、ママガール(마마걸)」という言葉がありますが、家族主義の文化はより多くのママボーイ、ママガールを生みました。勿論、子供が親から独立しないのは、韓国社会がまだ適切な社会保障制度を持っていないことにも起因しています。例えば、大学の学費は日本と同じぐらいですが、韓国の最低賃金は、2013年基準で1時間あたり4860ウォン(日本円で500円程度)しかありません。アルバイトをしても十分なお金を貯めることが出来ない韓国の学生たちは、親に依存するしかないのが現実です。さらに社会に任せるよりは、親子同士お互い守っていこうとする心理が強く作用しているのではないかと思われます。
家族主義のもう一つの否定的な面は学縁、地縁と共に韓国社会の血縁主義を生み出しました。公的であるべきの社会が家族間のように私的な情で結びつき、公私の区別が曖昧にあるという問題を生み出したのです。血縁主義については、大企業の社長の息子が親の会社に入社して来たり、要職に就いたりする背景は韓国のドラマなどでもよく扱われています。韓国は昔から単一民族、韓民族であることを強調しながら、国民一人一人を結束させてきましたが、最近は韓国でも多文化社会への移行が進んできており、このような単一民族という考えは血縁利己主義と思われ、過去のものとして血縁主義の意識が薄まって行くのではと考えられます。
物事にはいつも両面があると言います。韓国の家族主義、血縁主義にも肯定と否定の両面があります。家族主義のおかげで、韓国の人は家族を社会の基本単位として守ってきました。そして、親子同士の「孝(효、ヒョ)」という概念も、韓国文化の特徴として維持してきました。しかし、血縁に執着しすぎて同じ血縁ではない他集団、他民族を排斥する過ち、否定的な家族主義は韓国社会が克服していくべきものでもあります。

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