稲は熟すほど首を垂れる

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諺で知る韓国の熱い心
第九回 稲は熟すほど首を垂れる
稲穂 『稲は熟すほど首を垂れる(벼는 익을수록 고개를 숙인다、ビョヌン・イグルスロッ・ゴゲルル・スギンダ)』という俗諺があります。「教養があり修養を積んだ人は謙虚であり、他人の前で自慢しない」ことを稲が実り頭を垂れる姿に比喩したもので、韓国で謙遜という言葉を考える時に一番最初に思いつく表現です。 似ている表現としては、「お辞儀して頬を打たれることはない(절하고 뺨 맞는 일 없다、ジョルハゴ・ピャン・マンヌン・イル・オッタ)」という俗諺があり、「誰にでも謙虚な態度で対応すれば、他人から乱暴なことはされない」という意味です。他に同じ意味を持つ諺として、「瓶に満ちた水は振っても音がしない(병에 찬 물은 저어도 소리가 나지 않는다、ビョンへ・チャン・ムルン・ジョオド・ソリガ・ナジ・アンヌンダ)」というのもあります。空の瓶は振ると音がよくしますが、水が満ちている瓶は振っても静かであるということで、中身がある人は静かであることを表現した諺です。一方、反対の言葉は日本語の「自慢高慢ばかのうち」に似ている意味の「空の荷車が騒がしい(빈 수레가 요란하다、ビン・スレガ・ヨランハダ)」というのがあります。 「中身が無い人がより騒ぐ」という意味で、内面が重質である人は静かであるのに、中身がない人はうるさいことを、空の荷車がやかましく音を出す姿に比喩した言葉です。
韓国の有名人やCEO等に成功の要因を聞いてみると、いつも「謙遜」の価値を強調する答えが返ってきます。2012年「江南(カンナン)スタイル」という曲で一躍世界的に有名になった韓国の歌手「サイ(PSY)」は、アメリカ進出以後の記者会見で自分の世界的な成功に対し、「自分はカンナンスタイルの前にK-POPをブランド化した先輩・後輩たちに便乗しただけ」という意見を表明し、ワールドスターの高慢より謙虚な自身の姿を見せました。有名スポーツブランド・フィラ(FILA)の会長であるユン・ウンスさんもある講義で「謙遜より重要な資産はありません」と述べ、成功にあたっての謙遜の重要性を伝えたことがあります。他は、世界銀行(ワールド・バンク)のキム・ヨン総裁がソウル大学での講義で「母は私に"稲は熟すほど首を垂れる"という格言を教えてくれました。謙虚でないリーダーは本当に危険なものです。」、「リーダーになるために一番重要なのは謙遜を維持すること、韓国の文化が教える謙遜は皆さんが死ぬまでに覚えるべき重要な価値です。」と話したことがあります。
他人を尊重して自分を下げる「謙遜」という言葉はどこの国でも良いものとして好まれているわけですが、世界の中でも東洋、東洋の中でも儒教の影響を多く受けた韓国で「良い人間が備えるべき資質」として昔から重視されてきました。このような俗諺の存在や上記に紹介した著名人の言葉から、韓国の人がどれだけ謙遜を良いものとして考えているかが分かります。他には、公の場で自分を下げて謙虚な姿勢を維持するのがいかに当たり前なことなのか、自身を立てたり煽てたりしないのがどんなに大切であるかが感じられます。「稲は熟すほど首を垂れる」、「お辞儀して頬を打たれることはない」、「瓶に満ちた水は振っても音がしない」というそれぞれの俗諺は、確かに「どんなに偉い人でも本当のプロは自分を立てない」という意味を持っていますが、それと共に「自分を誇って他人より目立たとうとする人は嫌がられる」という韓国の社会的な雰囲気が反映しているのではないかと思います。
現代社会では「自己PRの時代」ともよく言われます。能力がある人、偉い人、そして自分のライバルだと意識する人が多いこの世の中では、自分を下げて黙っていることよりも自信を持ってより大きな声で、自分の能力、長所、出来ることなどを皆の前でアピールしなければならない、自分で表現しないと誰も知ってくれないということです。しかし、韓国社会では無理に自分を立てる人よりは自分を下げ謙虚である人が歓迎され、重んじられるのが韓国の情緒でもあります。学校でも職場でも自己PRをしすぎたり自慢しすぎたりする人は「튀는 사람、ティヌンサラン;目立つ人」として思われ、嫌がられる場合が多いです。韓国の学校で「왕따、ワンタ;いじめられる人」にされる学生たちがいるのもこのような雰囲気が原因だと思われます。このように自分をどれだけ下げてどれだけアピールした方がいいのかという悩みができてしまうのも韓国であり得ることです。
確かに、謙遜という価値を重視するのは韓国の大事な、伝統的な考えです。しかしながら、上のような例から韓国では平均よりも優れる人が目立ちにくい社会であるのが分かります。創意的な人材はなかなか出にくい社会でもあるのも韓国の現実です。みんなが一般化されて標準に少しでも外れたりすると認められない雰囲気から、みなが良いと思う職業、人生というのが大抵決まってしまっていると感じられます。謙遜という価値は人間の資質として非常に良いもので間違いないですが、育ち盛りの子供たちには謙虚な態度よりは自信を持つことを教えると、より望ましい社会になると考えられます。

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