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第十二回 アルバチュノ 

アルバチュノ、アルパチーノじゃないです!
『推奴(チュノ)』というドラマをご存知ですか。約3年前に韓国で放映された人気ドラマです。 私は見なかったので詳しい内容までは分かりませんが、チャン・ヒョク(장혁)、オ・ジホ(오지호)、イ・ダヘ(이다해)さんが主演だった、「朝鮮時代、逃げた奴隷を追いかける奴隷狩人の話し」を描いたドラマです。
「アルバチュノ」は「アルバイト(아르바이트)」と、このドラマ「チュノ(추노、推奴)」の合成語で、事前に連絡もなく、突然アルバイトを辞めてしまった場合に使われます。   5章の「サンポセデ」でも話したことがありますが、今の韓国では就職が難しくなっています。
そのため、正規職として就業する前にアルバイトで生活をしていく人も増えています。しかし、同時にアルバイトを軽く辞めてしまう人も増えたみたいです。
このように、アルバチュノが増えた理由はなぜでしょうか。まず、私の頭にパッと浮かんだのは「責任感」でした。今の若者たちは性格があまりにも甘くて厳しいことに耐えられない、あるいは耐えようとしないなどよく言われています。私もその若者の一人ですが、正直に言ってその言葉が全く違うとは言えません。大学でまわりをみても、自分自身を考えてみても、私たち若者は困難なことはどうしても避けたいという気持ちが強いからです。 課題をやってこなくても教授に謝らない学生や、自分の意見をはっきりと言えない学生などをみたことがよくあるのです。 しかも、アルバイトというのは家庭よりも学校よりも大きい社会の一部なのですね。社会人としての役割を責任を持って果たせないということは本当に大きな問題だと思います。
 また、このように厳しさを嫌がるという理由意外に、「人と直接対面することが難しい」と感じる人が多くなったということも一つの理由ではないかと思います。 最近、ラインとかカカオトークなどを通じてメッセージだけで人と連絡をする場面が多くなりましたね。カカオトークもラインも韓国発のサービスですが、韓国の若者はこのようなサービスに慣れるようになり、人と電話でコミュニケーションをするとか直接会って話すことを嫌がる人がどんどん増えた気がします。生活を便利にするいいサービスではあるものの、それに伴って副作用も出来てしまいました。 日本でもラインはほとんどの人が使ってるようですが、そのためか、あるいは元々そうだったのかは正直分かりませんが、電話よりもメッセージを好む人が多いというのは確かな気がするのです。そのため、アルバイトを辞める旨を直接に伝えられず、メッセージだけを送ってしまうか、何の連絡もなく逃げてしまうのでしょうね。
しかし、アルバチュノが若者たちだけの問題かというと全くそうではないと思います。雇用主にも大きい問題があるのではないでしょうか。
韓国のネットのある掲示文を読んだことがあります。それは、韓国のソルナル(설날、旧正月)とか、秋夕(추석、仲秋節)の時の宅配の上下車作業のアルバイト経験でした。そのような掲示文を書いた人は「僕のアルバチュノ経験」とか「体育大学生もアルバチュノになりそうな地獄のアルバイト」のように面白いタイトルをつけていたのですが、内容をじっくり読んでみると決して笑えるような内容ではなかったのです。
 「20キロ以上の物を運び続けた。終わったと思ったらまた新しいトラックが入ってきた。本当にアルバチュノしたかった」、「バイト代よりもその後の治療費の方が高かった。」などの内容でした。 これは、1年に何回しかない民族祭りの時期のアルバイトなので、少し極端な例かもしれません。しかし、カフェ、コンビニやファストフード店のような場合をみても仕事が大変すぎて困っている人が多いようです 。 更に仕事量の割りに時給が低すぎることも韓国アルバイトの大きい問題です。日本は最低時給が850円(東京基準)ですが、韓国のアルバイトの最低時給は2013年に4860ウォン(≒450円)で、2014年に5210ウォン(≒500円弱)になる予定です。このような低い水準のバイト賃金は厳しくアルバイトをする人の勤労意欲を下げると思います。物価は上昇するものの、賃金は上がらないということを考えてみると、これは雇用主よりも雇用を巡った社会的、あるいは政治的な問題のように思われますね。
仕事が辛すぎてまるで店長の奴隷として扱われるように思われる、しかもその厳しい仕事に追いかけられている、あるいは仕事から逃げたい、そのようなイメージとドラマ『推奴(チュノ)』がよく合致し、「アルバチュノ」という単語が生まれるようになったのではないでしょうか。

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