皆さん、「東方礼儀之国」という言葉をご存知でしょうか。
昔、中国で韓国を指して言った言葉ですが、「礼儀をよく守る東方の国」という意味を持っています。
韓国は昔から儒教文化があり、言葉の名声通り「礼儀」をしっかりと守る国でした。
その文化は言葉にも染み込んできて、「尊敬語」がとても発達していて、尊敬表現が大変重要視されます。わたくしも子供の頃、尊敬語を使わないと祖父や親だけではなく、近所の小母さんにまで起こられたりしました。
韓国語を勉強していて皆さんもお分かりだと思いますが、日常生活でも尊敬の表現はとても頻繁に使われていて、外国人にも例外ではありません。
初対面で歳や学年を聞く場面をよく見られると思いますが、特に年齢を基準とした上下関係で尊敬の相手を区分するためなんですね。
たまに、尊敬語を講義すると「先生、難しすぎます。丁寧体だけじゃダメですか。」 という質問を聞かれます。
そうですね。確かに、韓国人にしても難しいです。
ただ皆さん、想像してみてください。自分よりずっと年下の人が初対面からいきなりため口で言ってくる姿を。とても不快に感じますよね。
少し極端な例えかも知りませんが、それくらい韓国での尊敬表現は非常に大事です。
逆に、尊敬表現が自由自在に使いこなす ことができたら、ちゃんとした韓国語を覚えた人と高感度が最大アップすることに間違いありません。
ということで!今回は「尊敬語完全征服」というテーマで、難しく複雑しか言葉がないと思われる尊敬表現を、★さっぱり第解決★して差し上げます。
この文章が見終わった時点で、もう皆さんも余裕に尊敬語で話されていると思います。
尊敬語とは?
尊敬語とは、話し手が聞き手や他の対象について、それの高い・低い程度によって、言語的に区別して表現する方式や体系を指します。
簡単に言って、相手を上げたり自分を下げたりして、相手に尊敬を示す表現なわけですね。
韓国語では、その対象によって「主体尊敬」、「客体尊敬」、「相対尊敬」に分けることができます。
ただ、相手(主語)や相手に関連する対象を直接敬う「主体尊敬」が大半を示しているため、日本語に発達している「謙譲表現」があまりありません。
尚、日本語と同様に、統一した規則による一般敬語と原型と全く違う言葉で表す特別尊敬があります。
なので、ここからの作り方の説明を日本語に当てて考えると、より理解しやすくなると思います。
敬語の作り方
それでは、敬語の作り方をお教えします。
先ほども申しましたように、我々が普段使う日常での敬語は主体を直接敬う「主体敬語」が大半を示します。
ゆえ、今からご紹介するのは、その「主体敬語」についてご説明いたします。
1)一般敬語: -(으)세요
まずは、一般的な作り方から。
こちらは、日本語の「お~になる」や「~られる(受身形)」の作り方だと思っていただければ大丈夫です。
本来の尊敬作りは下記のように、「-(으)시 」を付けます。
基本形の語尾(-다 の前の字)にバッチムがあれば「-으시 」を、バッチムがなかったら「- 시 」を付けます。
ただし、バッチムが「 ㄹ 」の時は「 ㄹ 」が脱落されて「-시 」が付きます。
また、バッチムが「 ㄷ 」の時は「 ㄷ 」が「 ㄹ 」に変わって「-으시 」が付きます。右に変換したものが、尊敬の新たな原型になるわけですね。
<基本形 → 尊敬語>
ところが!?
「買う」の尊敬「買われる」と「住む」の尊敬「住まれる」が「 사시다 」同じですよね。
覚えるのには便利ですが、やはりこういう場合は、前後の文脈から意味を予想します。
さ、この変換した尊敬語の原型はこのまま使うことはできないので、丁寧体の叙述形(-(스)ㅂ니다 or -아/어요)や過去形(-았/었습니다 or -았/었어요)、疑問形(-(스)ㅂ니까? or –아/어요?)、勧誘形(-ㅂ시다 or –아/어요)、命令形(-(으)십시오 or -아/어요)などの終結表現に変えていけば完成!
ところが、普段使う会話体である「-아/어요体」をよくみてください。
叙述・疑問・勧誘・命令4つとも「-(으)세요 」と同一です。また、過去形は「-(으)셨어요 」と同一です。
つまり、同じ変形をしているんですね。
皆さんが最も使う場面としたら、日常会話になるでしょう。
ということで、「-( 으)세요 」と「-(으)셨어요 」だけ練習すれば問題なし!
いかがですか。概念の理解まではすこし複雑ですが、思っていたより簡単ですよね?
しっかり覚えて自身を持って尊敬を自由自在に使ってみましょう!
2) 特別敬語
続きまして、特別尊敬を学んで見ましょう。
日本語にも「行く・来る・居る → いらっしゃる」や「食べる・飲む → 召し上がる」などの特別尊敬語が存在しますよね。
同じく韓国語にも、いくつかの特別尊敬語が存在します。
このような特別尊敬語は先ほどの一般尊敬で言ってはいけません。
「行かれる」とも「いらっしゃる」とも、どちらも使う日本語とは異なる点です。注意してくださいね。
纏めますと、上記の表の言葉に関しては、「 먹으시다 (食べられる)」・「 자시다 (寝られる)」の一般尊敬は一切使ってはいけなく、「 계시다 (いらっしゃる)」・「 드시다 (召し上がる)」・「 주무시다 (お休みになる)」の特別尊敬を使います。
3)客体敬語(≒謙譲語)
最後は、日本語で言う「謙譲表現」についてご説明します。
実は、韓国語では「謙譲語」という言い方はなくて、尊敬表現の枠内で「客体尊敬」と呼ばれています。
今まで習ったのが、直接主体を敬ったり主体と関連する対象を上げて敬ったりする「主体尊敬」であったら、「客体尊敬」とは目的語や副詞を上げて話者が主体となる尊敬法です。
概念が少し複雑ですが、結局日本語の「謙譲語」の役割を果たす尊敬語だと思ってください。
日本語に比べ、主体を敬う方で尊敬を示す方が多いため、この客体尊敬はそれほど数がありません。
日常会話での尊敬語
それでは、実践尊敬表現を学んでみましょう!
やはり気になるところですよね。せっかく一生懸命覚えたのに、使えなくなっては意味ないですよね。
それでは、今まで勉強した尊敬表現を使って、いくつか例文を作ってみましょう。
こちらに書かせていただくフレーズは、実際韓国人が使うような言葉を選んで書いています。
尊敬表現が慣れるまで、このまま丸ごと覚えるのも一つの秘策かもしれません。
1、가시다 (行かれる)
A: 어디 가세요?
どちらに行かれますか。
B: 친구를 만나러 가요.
友達に会いに行きます。
Aのように、相手に質問する時は尊敬「 가세요?」を使いますが、Bは自分のことについて答えるので尊敬は使いません。
普通体「 가요.」で答えます(以下同様)。
2、읽으시다 (読まれる)
A: 신문 읽으세요?
新聞は読まれますか。
B: 아니요, 안 읽어요.
いいえ、読みません。
3、사시다 (買われる)
A: 한국에서 뭘 사셨어요?
韓国で何を買われましたか。
B: 화장품만 잔뜩 샀어요.
化粧品ばかり買いました。
4、사시다 (住まれる)
A: 어디에 사세요?
どこにお住まいですか。
B: 강남에 살아요.
カンナムに住んでいます。
5、만드시다 (作られる)
A: 어제 애가 소풍을 가서 김밥을 만들었어요.
昨日子供が遠足だったので、海苔巻きを作りました。
B: 많이 만드셨어요?
たくさん作られましたか。
6、들으시다 (聞かれる)
A: 들으셨어요? 빅뱅이 돔투어를 한대요.
聞きましたか。BIGBANGがドームツアーをやるんですって。
B: 정말요? 꼭 가야지!
本当ですか。絶対行かないと!
7、걸으시다 (歩かれる)
A: 다리가 너무 아파요.
足がとても痛いです。
B: 어제 많이 걸으셨어요?
昨日たくさん歩かれましたか。
8、계시다 (いらっしゃる)
A: 안녕히 계세요.
お邪魔しました。
B: 조심히 가세요.
気をつけてお帰りなさい。
9、잡수시다・ 드시다 (召し上がる)
A: 잘 먹겠습니다.
頂きます。
B: 많이 드세요.
たくさん召し上がってくださいね。
A: B씨도 같이 잡수세요.
Bさんも一緒に召し上がってください。
B: 네, 고마워요.
はい、ありがとうございます。
10、주무시다 (お休みになる)
A: 아버지께서는 벌써 주무세요.
お父さんはもうお休みになっています。
B: 너도 어서 자.
あんたも早く寝な~。
A: 네, 안녕히 주무세요.
はい、お休みなさい。
11、여쭙다 (伺う)
A: 실례지만, 뭐 하나 여쭤봐도 될까요?
失礼ですが、一つ伺ってもよろしいでしょうか。
B: 네, 말씀하세요.
はい、どうぞ。
A: 신촌역까지 어떻게 가요?
シンチョン駅がどこですか。
B: 아~, 이쪽으로 쭉 가세요.
あ~、ここをまっすく行ってください。
12、모시고 가다 (連れて行く)
A: 내일 할머니 모시고 병원에 가요.
明日お祖母さんを支えて病院に行きます。
B: 어디 편찮으세요?
どこかお悪いのですか。
13、뵙다 (お目にかかる)
A: 처음 뵙겠습니다.
はじめまして。
B: 만나서 반가워요.
お会いできて嬉しいです。
14、드리다 (差し上げる)
A: 어떤 걸로 드릴까요?
どれに致しますか。
B: 한 치수 작은 걸로 주세요.
一つ小さいのをください。
15、연세・생신・말씀 (おいくつ・お誕生日・お言葉)
A: 엄마, 내일 할머니 생신이에요?
お母さん、明日お祖母さんのお誕生日ですか?
B: 그래, 아버지가 할머니 생신선물 뭐 드린다고 말씀하셨어?
そうよ、お父さんがお誕生日プレゼントは何にするっておっしゃったの?
A: 모르겠어요. 근데 할머니 연세가 어떻게 되세요?
さ…、ところでお祖母さんはお幾つですか?
B: 88세이셔.
88歳でいらっしゃるの。
さ、ここまでいかかでしょうか。少しは整理つきましたでしょうか。
何回も申しましたが、韓国で尊敬表現というのは非常に重要です。最後の例文でもお母さんは、息子にため口で話しているのにも関わらず、主体であるお祖母さんに尊敬表現を使って敬う気持ちを示していますよね。
それくらい、韓国社会での尊敬表現は絶対です。
しかし、例文を見ていくと「あれ?ここでも?」と思われる言葉もあると思います。
日本との相違点といえば、日本は内側と外側の人で区別をするに反し、韓国は主に年齢を基準に尊敬の相手を区別していることです。
そう考えると、より理解しやすくなると思います。